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非結核性抗酸菌症


非結核性抗酸菌症という恐ろしげな名前の病気が増えています。抗酸菌とは、染色した後にその色が酸で脱けにくい菌の総称です。そのうちで、結核菌とライ菌以外を、非結核性抗酸菌と言います。この仲間は100種類以上あり、土や塵や池や温泉など自然環境に広く存在し、家庭内でも風呂や水道水に常在しています。

 非結核性抗酸菌症が人に発病する際の9割は、アビウム・コンプレックスという菌が原因です。肺に空洞ができたり、気管支が拡張したりしますが、症状は軽い咳ぐらいです。病気の進行も遅くて、1年後にレントゲン写真を比べて変化がないことも多く、人から人にも感染しません。結核とは親戚であっても、強盗とチンピラぐらいの差があります。

ところで、非結核性抗酸菌症の患者さんが、過去30年間で10倍近くに増えています。かつては、肺結核治癒後など肺機能が低下した方に発病したのですが、近年では、中高年のやせぎみの健康な女性に多く発症しているのです。しかし、なぜこの弱い菌が健康な女性に病気をおこすのか、なぜ最近増えてきているのか、わかっていません。自然に軽快する人がいる一方、薬が効かずに何年もかけて進行して呼吸困難になる場合もあるのです。弱いくせに、しつこいチンピラ野郎です。

非結核性抗酸菌の治療は、抗結核薬と抗菌薬を併用しますが、治療に反応しないことも多く、治療期間も約2年間と長く、副作用がでたり、再発することもあります。つまり、この病気の治療法は確立されていないのです。そこで、体力や免疫力を保つために漢方薬を使ったり、慢性的な気管支の炎症を抑える目的でエリスロマイシンを少量投与することがあります。これらによって、病気の進行を抑え、自然退縮を図るわけです。特効薬の開発を願うとともに、基礎体力をあげて自然を味方につけ、非結核性抗酸菌に打ち勝ちたいものです。


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